はじめに
Windowsで日本語入力をした方なら、誰もがMS-IMEの馬鹿さ加減を知っていると思います。学習をすればするほど馬鹿になる傾向を感じているのは僕だけではないはずです。
それを嫌ってATOKに乗り換えるという選択肢もありますが、いかんせん、ATOKはお金を出して買わなければなりません。(個人的には十分にその価値はあると思いますが)。
が、実はフリーの日本語入力ソフトというのもあります。例えばLinuxで標準的に利用されているAnthyをWindowsに移植したWinAnthyやネットワークを利用したSocial IMEがそれです。しかしWinAnthyは操作性が独特な上、変換精度はMS-IMEと同程度ですし、Social IMEは意外と賢いですが常時ネット接続が必要で、うっかり個人情報を単語登録すると微妙なことになります。(例:「ある」の変換結果に「アルファパーク太田408」)
というわけで、今回はフリーの日本語入力ソフトの中でも、僕が昔から使っているSKKを紹介しようと思います。
SKKの概念
SKKはSimple Kana to Kanji conversion programの略であり、その名のとおり非常にシンプルに作られています。普通のIMEのように文節や読み仮名の解析など、複雑なことは一切行いません。ユーザーが意図的に指定してやる必要があります。
普通のIMEの場合、学習するのはコンピュータの側です。しかしSKKは違います。ヒトの側で学習するのです。ゆえに誤変換は起こりえません。起こるのは全て、誤記です。これは手書きとまったく同様であり、実際慣れてくると手書きをしているような感覚に陥いります。これが癖になるのです。
欠点
SKKは特殊なIMEです。ゆえに慣れるまでは欠点のが目立ちます。そのため、利点よりも先に欠点から説明していきます。
- 慣れが必要
- SKKは他のIMEとはまったく異なる操作性になっています。また今迄PCの側でやっていた文節解析や送り仮名の指定を人間の側でやらなければならないため、初めのうちはどうしてもそれが脳への負荷になります。ゆえに最初の2週間はつらいです。修行と割り切る必要があります。
- 同音異義語に弱い
- ATOKみたく前後の文脈から正しい漢字を予測する、なんてことはまったく行いません。「貴社の記者が汽車で帰社する」と入力するのは非常に大変です。
- 送り仮名に弱い
- 送り仮名は自身の責任において指定しなければなりません。ゆえに下手をすると表記の揺れが生じたりします。……僕の文章をよく読んでる方は既に知ってそうですが。個人的には行う、行なうがよく揺れます。
- Shiftキーを多用するため、左手小指が疲れる
- 仕組み上、Shiftキーを多用します。ゆえに慣れないうちは小指が疲れます。もちろん鍛えられてしまえば気になりませんが。
- 疲れる
- PCの側でやっていた仕事を自身で受け持つわけですから、当然脳には今迄より負荷がかかります。
利点
- 速い
- 慣れると非常に速いです。ブラインドタッチが出来る方なら手書きと同じスピードで書けます。何故かというと、入力するたびに確定していくので、後ろに戻らないからです。通常のIMEの場合、「彼女の目的がなんなのか未だにわからない」という文を変換するとき、「かのじょのもくてきがなんなのかいまだにわからない」まで入力してからSpaceを押す人が多いでしょう。するとその後、誤変換が無いか見るために必ずジェラのところまで目を戻す必要があります。結局自分の入力した文章を二回読んでいるのです。使えばわかりますが、SKKは入力=確定なので目を戻す必要はありません。これが手書きと近い感覚と言われる由縁のひとつです。
- 軽い
- SKKは複雑な処理をなにも行いません。ゆえに軽いです。
- 無料
- タダです。ゆえに許されるのであれば、会社のPCに入れても怒られません。(ただし共用のPCに入れるのはやめておきましょう。)
- OSを選ばない
- SKKは元々emacsというUnixで利用されるエディタで使うために作られたソフトですが、その単純さからいろいろなOSへ移植されています。WindowsではSKKIME、MACではAquaSKK、Unixではuim-skkなど。
- 心地良い
- 入力時にある程度頭を使いながら書かなければならないのは、慣れない内は疲れますが、慣れてくるとある種の心地良さが生まれます。変な誤変換にイラっとなることもなく、Shiftをリズムカルに入れてゆく。脳に受かぶ文章をダイレクトに入力してゆく。手書きで文章を書くのと似ているのです。これはある程度使いこまないとわからない部分なのですが、私を含め、この心地良さがために離れられなくなっているユーザは非常に多いです。
- スムーズな辞書登録
- SKKでは変換テーブルを最後まで行ったあと、最初に戻るなんてことはありません。その場ですぐに辞書登録モードへ移ります。考えてみれば最後まで行く=辞書に無い、なのですから、これは非常に自然な動作です。気が効いてます。
ピンときたら……
ちょっとでも興味が出たなら、使ってみましょう! なにしろフリーなのです。そして実は非常に簡単に試せるのです。
firefoxでSKK チュートリアル by JavaScriptに行けば、とてもスムーズに操作の仕方がひととおり学べてしまいます(IEだと動きません…)。ただ最初に上にある確定キーをCtrl+JからCtrl+Qとかに変更してください。実際のSKKは確定キーがCtrl+Jなのですが、by JavaScriptの場合、Ctrl+Jだとブラウザが邪魔をしてうまく動かなくなってしまうのです……。
チュートリアルを最後まで到達して、なんとなく気になったならSKKIMEのインストールです。地味にわかりにくいページですが君のてのひらからさんでインストールから初めの設定までわかりやすく解説されているので参照してください。
最後に
SKKを利用していくと、実は誤変換というものが非常に大きなストレスになっていたことに気付かされます。この場合の誤変換とは最後に確定した形だけでなく、最初の一発目のSpaceで文節区切りがうまくいっていないものも含みます。
日本語の仕組み上、完璧な文節区切りはありえません。「ここでは着物を脱いでください」「ここで履物を脱いでください」どちらが正しいか判断できるのは人間だけです。となれば結局合っているかどうかは、毎回人間が確認せねばならないのです。人とPCの意思疎通が必要なのです。となれば、はたしてPCが文節の区切りを推測する意味はあるのでしょうか?
SKKの入力方式はPCとヒトの意思疎通をスムーズに行います。そしてSKKは人の領域である文節指定まで踏みこみません。無駄なことをしないからこそ、PCがヒトの領域に踏みこまないからこそ、逆に淀みがないのです。きっちりとした線引きをし、お互いを侵攻しないからこそ、逆に良好な関係を築けるのです。
これって、ちょっと面白いと思いませんか?
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書いた日: 2009/09/15 02:45 カテゴリ:topic