カテゴリ:トピックス

役に立たないことが書かれているよ。

2009/09/04

Windows7

なんか某所で質問があったので。コメントで返信しようとしたけど長くなるのでここに書くよ。

あ、この記事は書いたひとの予想が多く混入してます。注意してね。

Vistaってのが去年くらいに出てたような気がするんだけどもう次なのかい?

「もう次」というのは恐らくXPの印象が強いからかと思います。

Windowsリリース一覧
Versionリリース年
Windows 3.11993
Windows 951995
Windows 981998
Windows Me / 20002000
Windows XP2001
Windows Vista2006
Windows 72009

上記を見ればわかるとおり、ほとんどの場合3年程度の間隔でリリースされています。

むしろXPが例外的に長いというのが正解です。そして何故XPが長くなったのか、これはVistaが不評な原因と密接な関係があるのです。

XPが長くなった要因は2つあります。まず最初に、XPが出た当初は今のようにブロードバンドが一般まで普及していませんでした。ADSL普及の先駆けとなったYahooBBのサービス開始が2001年ですので、ほぼ同時なんですね。

そうして家庭にブロードバンドが普及するにつれ、ウイルスやセキュリティが大きな問題として叫ばれるようになりました。しかし出た当初のXPにはセキュリティ対策は不十分であり、それが大きく槍玉に上げられるようになっていきます。マイクロソフトとしてもその声を無視することは出来ませんでした。

そうしてXPが登場して丁度3年となる2004年、WindowsXPのSP2がリリースされます。「セキュリティの強化」を最重要項目と掲げ、安心できるWindowsと宣伝し、アップデートを促しました。

しかし実際このSP2は非常に大きなアップデートであり、また3年という区切りからしても、本来であれば新しいOSとして販売したかったモノでした。しかしセキュリティを求める市場の声を無視することは出来ず、またセキュリティ以外に大きな機能追加も出来なかったことから、マイクロソフトは仕方無く無償リリースをしたのです。

すなわち3年という節目でWindowsXP SP2という大きなアップデートをしてしまったこと。これがXPが長くなる第一の要因です。

もう一つの要因。それは単純にVistaの開発の遅れです。これはWindowsXP SP2の開発に大きく人員を取られてしまったことで遅れたという部分もあります。

が、それよりも大きな問題として、実はVistaでは非常に野心的な機能が追加される予定でした。WinFSという機能です。内部の仕組み、今のファイル保存の仕組みを大きく変えることになる革命的な機能でした。しかしこれがあまりに野心的であったため、なかなか完成させることが出来ず、開発は遅れていきます。

内部的なメインとして据えていたこの機能の開発遅延により予定は大きく狂っていきます。当初(2003年)の予定ではVista(当時はLonghornという名前でした)は2004年の夏に出荷予定でした。WinFSが速いうちに完成していればそうなったかもしれません。しかし結局2004年の夏に出たのはWindows XP SP2です。

が、それでも未だWinFSの完成のメドは立ってきません。1ヶ月の発売延期は1ヶ月人件費が増えるということ。つまり延期に延期を重ねることにより、どんどんとコストが、リスクが高まっていきます。さらにPCメーカーからもリリースの要求は高まっていました。新しいOSというのは新しいPCを売る絶好の機会になるからです。いくらマイクロソフトでも、これ以上の延期は難しくなっていきます。

そこでついにマイクロソフトは決断します。WinFSの搭載を後のバージョンアップであるSP1で搭載すること決定したのです。これが2005年初頭の話になります。その後2005年夏に「Vista」という名称が決定。2006年の後半に出荷予定となりました。2006年後半とは、WindowsXPが出てから5年となるものでした。マイクロソフト的に、これが譲歩できる最大のところだったのだと思います。

しかしネックとなっていたWinFSの先送りをしても、遅れは取り戻せない状況でした。このままでは2006年のリリースすら難しくなってしまう……。よって2006年夏、ついにWinFSの開発中止を決定。さらに搭載予定であったその他の大きな内部変更も見送り、Aeroという見た目が派手な機能を広告の中心に据え、なんとか2006年12月、企業向けリリースをすることが出来たのです。そして店頭にて一般販売されたのは2007年1月のことでした。ここまでギリギリだったのです。

つまりWindows Vistaはビジネス的要因が非常に強い、多くのものを先送りにした間に合わせで中途半端なリリースだったのです。ゆえに完成度の低さがそこらじゅうで目につくことになってしまいます。

それは不安定というわけではありません。むしろ安定性はWindowsXPの正常進化であり、落ちているわけではありません。

しかし広告の中心に据えたAeroはスタートメニューの構成などなどを大きく変更したものです。誰もが新しい機能、新しい使い勝手には戸惑います。だからこそ、わかりやすく作る必要がある、はずでした。しかしそこは間に合わせ。完成度が低く、痒いところに手が届かない、非常にわかりづらいものになってしまいました。

さらに子供騙しを狙った見た目の派手さを全面に押し出しています。過剰な演出はうざいだけでなく、そのために処理を追加しなければなりません。つまり、動作が鈍くなる、いわゆる重いといわれるものです。

"わかりづらく、うざく、重く、遅い。" 結局ユーザーの評価はさんざんなものになったのです。評判が広まるにつれ買い控えが起き、Vistaのリリースから3年が経過した今も、一番使われているOSはXPという状況になってしまいました。

しかしマイクロソフトは反省が出来る企業です。今回のWindows7はVistaで出た不満を考え、乗りこえ、顧客の信用を取り戻すことを第一に考えて開発されています。

余分な演出や機能を抑えることで動作を軽くし、わかりづらかった部分を無くすか、あるいはわかりやすく作り直す。Vistaの二の舞になっていないことを現実で示し信頼を取り戻すため、RC版や体験版を無償配布し、実物にて大きく広告する。

"わかりやすく、シンプルで、軽快で、速い。"マイクロソフトという人材豊富な大企業がこれを本気で目指せば、それは現実になります。今回のWindows7は、本気なんです。

ただ、まだ発売されているわけではないので、実際どうなのかというのはわかりません。また、XPから変更されている部分も多いため、いくらVistaよりはわかりやすいとはいっても、戸惑う部分は少なからずあると思います。

ゆえに、DVDが焼ける環境と、HDDにパーティションを割り当てていない空きがあるのなら。もしくは仮想化環境が導入されているのであれば、体験版を試すことをお勧めします。企業向けリリースのEnterprise版が90日無料で利用できるものが用意されています。ただインストール時にアップデートを選択すると90日後エラいことになりますし、間違っても今XPで使ってるスペースをフォーマット(初期化)しちゃわないよう気をつけてくださいね。


  1. ろき:Vistaの互換性の悪さはほんと前の現場で散々泣かされましたわ。(ノд`)妥協なきOS対応は一般パッケージソフトの宿命か
  2. S-BOW:これはなんていうガイアの夜明け? 非情に判りやすかったです。まあ自分はまだまだXPを使わざるを得ないだろうけど……早く新しいPC欲しいよorz
  3. かくに:これほど細やかに解説してもらえるとは・・・三世代に渡るOSの歴史がここに! こんな理由があったんですね。こう説明してもらうとビスタって物凄い地雷だったって事のような・・・おっかねぇ・・・
  4. 管理人:>>ろきさん そもそもVistaはXPとの互換性を捨てるはずでしたからね……。Vista用としてまったく別のアプリを作成するのがあるべき姿のはずなわけで。Windows7も内部的にはほぼ捨てています。が、Vistaの時の声を生かしてXPモードを搭載。こういったところがマイクロソフトの素敵なところです。僕は嫌いですけど。 >>S-BOWさん そう言われてしまうとむしろカノッサの屈辱を目指したほうがよかったかなぁとか。Win7はかなり良い感じなので、体験版使ってみては? HDD増設する必要ありますけど。
  5. 管理人:>>かくにさん Vista史は意外とドラマチックなので、この場を借りて書いてみました。そしてVistaという地雷があったおかげで、Win7は良いものになりそうな感じです。WinXPも良いOSなのですが、まだまだセキュリティが甘いので……。

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書いた日: 2009/09/04 19:34 カテゴリ:topic

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作成:スラマイマラス
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