カテゴリ:妄想

読むと死にます。

2007/09/07

無題

あちこち体を動かしながら、妙にぎこちなさそうにしているジャーマネンにカラベラスは声を掛けた。

「どうしたの? ジャーマネン」

「カラベラス様…申し訳ありません。どうやら風邪を引いたようでして…」

「風邪?」

「はい。どうも身体が硬いのです…」

ジャーマネンが肩を動かすたび、こきん、こきんと、関節が鳴るような音が響く。なるほど確かに固くはなっているようだが。

「それ、本当に風邪なの?」

カラベラスの問いに、ジャーマネンは頷く。

「寒けも少しあるのです。風邪とはそういったものだと聞きましたが…」

カラベラスはそれを聞き、くすりと笑う。

「馬鹿ね、もう冬なんだから寒いのはあたり前じゃないの…」

「冬、ですか?」

「…ああ、そうだったわね。貴女は『冬』を知らないのね。ネメシスにも未来にも、四季はなかったから」

今はもう遠くへ行った記憶を辿るカラベラス。

「『秋』は、木々がみんな私のような色になって、とても美しかったです…」

「そうね。これから雪が降って、みんな真っ白になるの。それもとっても綺麗なの。」

「…『雪』とは、もしかして今、外に降っているものでしょうか?」

カラベラスが外を見ると、灰色の空に白い粒がひらひらと舞っている。

「あら、寒い寒いと思ったら…」

「綺麗、ですね…」

寄り沿うように外を見ながら、ジャーマネンが呟く。

「ええ、本当に綺麗」

ジャーマネンとカラベラスは無言で窓の外を見つめる。

「でも困ったわね」

ふいにカラベラスが口を開く。

「なんでしょうか?」

「固いって、貴女、凍ってきてるのよ。なんとか考えないと…」

冬は、これからが本番だった。


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書いた日: 2007/09/07 18:57 カテゴリ:妄想


作成:スラマイマラス
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